未来のアタリマエを生み出す
**月一で浪江に
ひょんなことから、月一で福島県は浪江町に通うことにした。今のところいつまで続けられるか見通しはついてないし、どんな展開になるかはよく分かっていない。でも、これが町になんらかの影響を与えていることは確かだ。
僕の構想では、学部卒業までの2年間は続けたいと思っている。ただ自分が資本なので、あまり疲れ過ぎたら休むと思う。でもそれは何も永遠の別れではなくて、いつでもHi!と戻ってくるような別れだ。
**MIRAI 2061
箭内道彦さんと児玉祐一さんがタッグを組んで作った、ショート・ミュージカル・ムービー”MIRAI 2061”が今年の2月に公開された。
http://ch.pref.fukushima.lg.jp/mirai2061/:contents
https://youtu.be/mLOeF2pW978:contents
私はこのムービーに大変感動した。何を表現しているかということを一度横に置いて、歌が素敵で、ダンスが素敵で、世界観が美しいと思った。何回もリピートしたくなるような完成度だと思った。
内容については、これをどう評価するかというのは非常に複雑でコメントがしづらいが、福島が(少なくとも箭内さんは)未来に向かって歩みを進めているのだという箭内さんのメッセージは素敵だと思った。
**あの日をどう過ごすか
以前「ふくしまをずっと見ているテレビ」の中で、3.11をどう過ごすかというのが取り上げられていた。箭内道彦さんと音速ラインのメンバーの方は、毎年箭内さんの実家に集まり、3.11はネット配信をしているのだそう。それは、地元の方と一緒にまったり過ごそうよ!という想いがあるそうだ。
驚いたのは、被災された方の中で「3月はテレビをつけられない」という方がある程度の数いるということだ。3月は各局が震災の特集を組むし、その中では当時の映像が使われることもある。それは、受け手によっては大変にショックなもので、テレビで流れるのは恐ろしいほどなのだと想像できる。私の母親でさえ、あの映像にはトラウマがあるらしく、見たくないと言っている。
もちろん、今の事実をしっかりと認識し、過去に起きたことを整理することは大切である。(歌詞にもその過程を踏むこと、そして人と人が溝を埋めたことが出てくる)ただ、クリエイターとしての箭内道彦さん求められたのは他の人がやっていないこと、つまMIRAIを語ることだったのだと思う。
**箭内道彦が語ることば
劇中で使われている楽曲「みらいはすこしふしぎ」は「2061年のラヴソング」という曲の詞がもとになっている。箭内道彦さんが作詞された。
このムービーで語られる言葉を一つ一つよくよく聞くと、なかなかに考えられている。
ムービーの中では福島の過去を語り、未来を語るのだが、そこには1つも「震災」「地震」「復興」などという文字はない。彼は、あの震災と原発事故を「大けが」と表した。原発の廃炉は「眠りにつく」と表現した。さすがだな、と思った。背景に使われている木に何が書いてあるのかなと思ったら「驚き桃の木」と書いてある。
そうか未来は明るく語るのも暗く語るのも自由だなと思った。
* *馴染みのある風景
劇中に出てくる建造物は全て福島に今あるもの、これからできるものである。例えばロボットフィールドは今年から始動し、徐々に拡大していく。野馬追、鶴ヶ城、猪苗代湖なんていうのは福島県民にとってソウルシーンのような、誰もが知っているものだ。私自身、鶴ヶ城や猪苗代湖を訪れたことがあるので、あの映像が出てきた時、感動して涙が出た。ああ、これは相当福島を知っている人がよく考えて作ったのだろうなと思った。
* *自然と姿を重ねた
主人公は2011年当時20代前後の設定である。この主人公に私は自分の姿が重なってみえた。
「まさかこんな日が来るとはね」主人公(?)みらいのおばあちゃん、ひかりが呟く。
この一言に大変にたくさんの意味が込められていると思う。50年経ち、福島が日本の新たなコアになってくる。自然と先進技術を交えた日本のトップランナーになる。大けがから立ち直り、3世代目のみらいが楽しそうに踊る。
50年後の未来は、今の僕からすれば、まさかの連続だと思う。
「あたりまえのこと
でもちょっと
わたしにとって
みらいはすこし・ふしぎ」
未来のアタリマエは今ここから生み出していく。きっと僕らにはそれができるし、それが今やらなければならないことなのだと思う。3世代先のみらいちゃんが笑顔でクリームボックスを食べられる社会を作るのが、私たちに託されたことではないだろうか。